コンパスロゴでお馴染みのメンズウェアブランド「ストーンアイランド(Stone Island)」。1982年に創業され、革新的なテクノロジーを用いたアイテムは"本格派"の男性たちを中心に支持を集めてきた。近年では「シュプリーム(Supreme)」とコラボするなどストリートウェアを好む層を新たに取り込み、今秋には南青山に日本初の旗艦店をオープン。立ち上げ翌年から同ブランドに参画し、ブランドのDNAを築き上げたクリエイティブディレクターでオーナーのカルロ・リヴェッティ(Carlo Rivetti)に聞くストーンアイランドの現在地とは。
ー ストリートでの人気はどこから?
私たちが意図的に計画したものではなく、向こうからのオファーで実現した「シュプリーム(Supreme)」や「ナイキラボ(NIKELAB)」とのコラボレーションが、新しい世代にブランドを知ってもらう大きなきっかけとなりました。若いカスタマーに向けた施策は特にしてこなかったのですが、幸運にも彼らの方からアプローチしてくれたというか。コラボを経て顧客層は拡がりましたが、今でも私たち自身は全く変わっていないですね。
ファッション業界にはサイクルがあり、自分が好きなことを続けていたらいつの日かちょうどトレンドにすっぽりはまるタイミングがあるんだと思います。様々な企業が五か年計画を作ったりしますが、正直クレイジーだと思っていて。私は来年何が起こるかすらわからないですよ(笑)。
ー ストリートでの人気を受けて、これまで長くブランドを愛用してきた顧客の反応は?
ブランドから離れていくこともなく、みんなハッピーですよ。ずっと昔からストーンアイランドを着ていた僕みたいな小太りの年寄り世代も、若い人たちが着ているということで"クール"だという証明になりますから(笑)。
「ストーンアイランド」はロイヤルカスタマーが多い印象です。熱心な顧客を持つ秘訣は?
やっぱり、変わらないこと。ブランド立ち上げ当初から、私たちは変わっていないんですよ。その一貫性ある筋が通った姿勢が支持を得ているのかと思います。過去にはウィメンズを立ち上げる話も出ましたが、断固として拒否して。最近では若い女性もメンズアイテムを着てくれるようになって、それもとても素敵に着こなしてくれるので見ていて嬉しいですね。
あと、ストーンアイランドを着る人は、一つの同じクラブに所属しているかのような仲間感がある。コンパスバッジがついた服を着ている男性と道ですれ違ったら、お互いに「おっ」と意識して目があうような。そういう感覚も上手く働いているのかと思います。
ー 2008年にデザインチーム体制へと移行。どう変わりましたか?
現在デザインチームには8人所属していて、最年長でも33歳と若いデザイナーばかり。それぞれ出身国や触れてきたカルチャーが違うので、フィールドジャケットを一つデザインするにしても、英国人とフランス人では出来上がるものが変わってくるんです。以前よりもインターナショナルで多様的な視点からデザインが生まれるようになったと思います。
立ち上げから36年。これまでのビジネスを振り返ってみていかがでしょうか?
90年代後半に一度、業績が横ばいした年がありましたが、その年以外は微増だとしてもずっと成長し続けていますね。特にここ5年はぐっと上がったため、生産が大変です。いま抱えている最大の課題は、生産数が増える中でクオリティを保ちながらうまく回していくことですね。
ー 約5年前から急激に成長し始めた背景には何がありますか?
エディトリアルコンテンツを作ったり、ソーシャルメディアを使うようになりました。いまはストーリーテリングの時代ですが、その点においてストーンアイランドはテクノロジーや素材に関する36年分のストーリーがあるのは強い。ブランドのフィルムを作るにしてもアイテムを着た綺麗なモデルの動画ではなく、プロダクトの詳細に焦点を当てた内容にしています。
ー ストーンアイランドにおける今後の展望は?
いまの成功をどのようにして続けていくか。ストーンアイランドはデザイナーや職人など関わる多くの人の本気の仕事が詰め込まれたプロダクトが揃うブランド。そのためストーリーを語れる場所さえあれば、カスタマーはブランドの魅力を理解してくれるはずだと私自身は非常に楽観的です。今後も急ぐことなく、スローでも健全なやり方で成長していけたらと考えています。